眠れないと伝えてみたー

ユーエがアルさんに「眠れない…」と言ってみると小さな声で子守歌を歌ってくれました。


熱があるんだから布団に入って寝なさい、と、ユーエをベッドに寝かしつけて、キッチンでタオルを濡らして寝室に戻ってくると、不安げな藍色の瞳と目線が合う。今にも身を起こしそうな彼女の額を押し戻すように濡れタオルを当てて、言い聞かせる。

「だーめ」
「うええ……」

いつもの口癖も随分と弱々しく、逆に心配になった。だから早く寝て治して欲しいんだけど、

「寝なさい」

わざとらしく寝返りを打ってその額から濡れタオルを落としたユーエが手を伸ばして、アルキメンデスの服の裾を捕まえる。
そのままちょん、と引っ張ってきて、

「眠れないの……」

そう、言った。
服の裾を捕まえてきた手を取って布団の中に押し込めて、アルキメンデスはベッドの傍らにそっと寄り添う。

「しょうがないな」

濡れタオルの上から軽くぽんぽんと頭を撫でて、それからそっと頬を一撫でして、静かに紡ぐ。

「Over in Killarney Many years ago, Me Mither sang a song to me in tones so sweet and low――」

不思議そうな顔をしている彼女の頭を撫でながら、静かに、静かに。
そのうちとろんとしてきた藍色の目を見つめながら、優しく。

「Too-ra-loo-ra-loo-ral, Too-ra-loo-ra-li,Too-ra-loo-ra-loo-ral, hush now, don't you cry――、……」

歌い切る前に彼女は意識を手放したようで、微かに寝息が聞こえてくる。

「……寝たか、」

眠れないの、と言っていた時に比べれば幾分穏やかで眠っているその顔を見て、ひとまずは安心した。


アルさんがユーエに「眠れない…」と言ってみると手を握られて「眠れるまでこうしてる」と微笑まれました。


熱があるんだから布団に入って寝なさい、と、彼をベッドに叩き込んで(大丈夫だから、とかしつこいので意識飛ばしてやろうかと思ったけどそこは耐えた)、キッチンでタオルを濡らして寝室に戻ってくると、不安げな青の瞳と目線が合う。今にも身を起こしそうな彼の額を押し戻すように濡れタオルを当てて、言い聞かせる。

「寝ろ」
「……わかったよ……」

そう言う声は普段のような勇ましさやらどこか匂わせる子供っぽさはどこにもなく、ああやっぱり具合悪いんじゃん。と再認識させる。心配だ。

「早く寝て、元気に、なってよ、」

あと何か必要なものあるかな、と思いながらユーエが寝室を出ようとすれば、布団の中から伸びてきたアルキメンデスの手が、ユーエの服の裾を捕まえていた。
くいくい、と引っ張られて、それから、

「……眠れない」

その言葉に嘘偽りは無さそうで、やはり弱っているのか不安げな瞳が向けられる。
服の裾を捕まえてきた手を取って、ユーエはベッドの傍らにそっと寄り添う。

「しょうがないのね、」

取った手は離さない。
ふわりと包み込むようにその手を握って、

「眠れるまで、こうしててあげる」

穏やかに微笑んだ。
きっと頭も撫でてほしいとか言うんだろうと思って、言われる前に手を伸ばす。濡れタオルは落とさないように、そっと、青い髪を撫でる。

「……ありがとう、ユーエ」
「お礼はいいから、はやく元気になって」

観念したように微笑んだ青い瞳が、そっと閉じられた。
寝息が聞こえてくるまで、約束したとおりにずっと手を握って、そこにいた。

20140325

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両方ともに風邪を引いてもらいました。ユーエだったらそうじゃない時でも眠れないっつっても違和感なさそうだけどアルさんどこでも寝れるスキル持ちじゃねえか!!みたいなあれそれ
アルさんの子守唄はアイルランドの子守唄だそうです。横文字名前マンが日本語の子守唄じゃな……と思って必死にググった。