忘草の置き土産

「お腹が空いたのだー」

なんて底抜けに明るい声と共に、その少女は唐突にユーエの前に顕現した。
どこに行くでもなく、部屋で一人で本を読んでいたユーエの目と鼻の先に、逆さまの顔が現れる。翠色の瞳がにたりと笑いながら藍色を捉えて笑っている。

「!?」

まず真っ先にその視線を本で遮り、突き飛ばす勢いでソファから跳ね起きる。激突してもおかしくないはずだったが手応えは一切なく、背後からまた明るい声がするのだ。
忘草のソウ。精霊とかいう人智を超えたいきもの。いきもの、と言えるかも怪しい、概念。

「……なんなのね」
「それはこっちの台詞なのだー!!……いきなり突き飛ばすなんてひどいのだ」

現れたり消えたり飛んだり跳ねたり、目の前の少女はとにかく不思議な力を持っていることをユーエはよく知っていた。というか思い知らされる機会があった。
正直なことを言うと、彼女のことは苦手だ。ひとの領域に土足で上がり込んでくるようなそれを感じて身構えてしまう。
さっきの突き飛ばしだって、そもそも突き飛ばすつもりなんてなかったし、どうせ当たるわけがなかったのだ。瞬間的に霧散するなりなんなり、彼女にはいくらでもかわす手段はあったろう。
どう対処しようか苦慮していると、ソウはふわふわとこちらに近寄ってくる。無垢で無害に見える笑顔だけれど、その下の不気味さは計り知れない。

「ユーエ、お腹空いたのだー」
「……わたしに言われても。わたし料理はできないのね」

お嫁さんのくせにか?という返しの言葉が強く強く突き刺さった。できないものはできない。せめて練習中って言っておけば良かったか、と上げた視線の目の前に、また翠色がいる。
鼻先をほんのり草木の匂いが掠めていく。

「僕はユーエを食べてみたいのだー」

そんな明るい声には、冗談の成分はかけらもなかった。

「……え?」

疑問の色を藍色が浮かべた瞬間、強い力で突き飛ばされる。起こした身体は再びソファに沈められた。
あの精霊は何を言っているんだ、わたしを食べるって何をだ、精霊はそんな怖いいきものだったのかやめろ冗談じゃない、浮かんだ疑問の色は即座に恐怖に塗り替わる。身を起こそうにも、自分の上に乗っている精霊の力は妙に強く、抵抗すら許されない。ただ視線だけで、何をするつもりなのか、それを訴えるような真似しかできなかった。

「な、なに」
「痛いようにはしないのだっ」

そう言って、勿忘草の精霊は、その小さな手をユーエの首筋に伸ばした。
手がかかる。首でも絞めようというのか、そう思っていた矢先、精霊の細い指がするりとユーエの首筋を撫で上げる。

「ひ、っ!?」

全く想定外の感覚に妙な声が漏れて、戸惑った目を自分の上に乗るソウに向ければ、彼女は楽しそうに笑っている。
まんまるい目をこちらに向けて、そして無邪気に言うのだ、

「……もっと、ちょうだい?」

翠の目が近づいてくる。
戸惑う藍色を一瞥して、ソウはユーエの右耳に噛み付いた。


「ひっ、あ!?」

明らかに、ユーエのあげる声の質が変わった。首筋よりも「おいしそう」なところを割とあっさり見つけられて、精霊の顔に自然と笑みが浮かぶ。
彼以外に触れることを許したことはないのに、耳介に与えられる刺激に肩が跳ねる。繰り返される甘噛みの合間に、まだソウを睨みつける余裕はあった。今すぐにこの精霊を跳ね除けたい。気持ち悪い!

「……どうしてそんな顔するのだー?」

おいしいのがおいしくなくなっちゃうのだ、とか、そう言いながらも、ソウはユーエの耳を攻めたてるのをやめない。
せめて何を食べているのか聞けば良かったかもしれない、皆目検討がつかなくて、かといってこのままされるがままになっているのは、彼にとにかく悪い気が、

「っ、う、……!」

油断すれば零れそうな嬌声を喉の奥に押し込めて、気持ちを落ち着けようと大きく息を吐きだした。まだなんてことはない、別に彼にされてるわけじゃない、だからこの感覚だって全部嘘でなんてことはなくて、彼女が気が済むまで耐えられれば、それでなんとかなるはずだ。
とは思うものの、既に彼によって明確に弱点だと知らしめられている部位を、随分と執拗に、この精霊は甘噛みしてくる。早く気が済んで離れていけ、それか彼が帰ってくればまた違うのだろうか、――むしろ今帰ってこられたらそれはそれで、大変なのでは?

「ふ、っあ、……ぐ、ぅ……」
「それでいいのだ、我慢しないで鳴いていいのだー」

そうしたら僕もお腹いっぱいになるのだ、そう彼女が宣う声は既に遠い。

「……何なの、ほんとに、っうあ、ぁ」
「大人しく、僕に任せていればいいのだ」

ユーエの抵抗する余力を刈り取るように、精霊の小さな手が彼女の首筋を数度撫ぜる。最初に指を走らせたときとは随分違う色の声があがって、最初は随分強気な色を浮かべていた藍色の瞳は、もうすっかり惚けてしまっていた。
荒い呼吸を繰り返す彼女は、すっかりできあがった、差し出されたら迷わず手を出すような、そんな状態でいる。

「んー、やっぱり僕の思ったとおりなのだー!」

そんな底抜けに明るい声がする一方で、ふわふわした頭は何も考えられなくなっていた。頭の奥底でちらちらと衝動が走る、こんな、半端な状態でよくも、とか、いっそ、とか、そうやって走ったイドはまだ、理性で塗りつぶせる程度のレベルだ。実際どうなのかは知らないが、自分より年下にしか見えない相手に何を、と考えるくらいのそれと、彼以外に身を任せるなんてしたくない、というそれは、まだ十分に強かった。
――玄関の扉が開く音がする、

「……!?」
「旦那さんのお帰りなのだー、僕は邪魔にならないようにバイバイ、だなー」

そんな声を残して、自分のことをさんざん弄んだ少女の姿は霧散する。
この状態で一番会いたいのか会いたくないのか判断できないひとの気配がする。何言われるかたまったものではないし、まず自分が正常な判断をできるのかが、一番自信がない。いっそこの衝動に身を任せたほうが楽なのでは?そう思えば余計に頬は紅潮するし、どうするべきかどんどん分からなくなる。

「たっだいまー、……、……ユーエ?」

そうして悩んでいるうちに視界に入った青色が、戸惑った視線を投げかけてきていた。


「おいどうしたユーエ、熱でもあるのか」

まず先に思いついた言葉を口に出しながら、アルキメンデスはソファに横たわるユーエに駆け寄った。赤い顔ととろんとした目は、少なくとも彼女が通常の状態でないことを告げている。風邪だとしたらこんなところで寝かせておく訳にはいかないし、少しでも早く帰ってやればよかったと後悔、するところだった。
ユーエの手がゆらりと伸びる。彼の肩に回された手は、嫌に扇情的だった。

「……おい、ユーエ、」
「おかえり、アル、」

有無を言わさず深く口付けて、求めるように貪る。最初こそ驚いたような反応を見せたアルキメンデスだったが、すぐに彼女の求めに応じて、長く、深く、求め合う。
つ、と糸を引いて離された唇がてらりと光って、紅潮した顔と合わさって、彼の衝動を煽っていく。

「……なんだユーエ、随分積極的だな……うあっ!?」

ふ、と耳に息を吹きかけられたアルキメンデスが驚いた声をあげたのも束の間、その隙を見計らったかのようにソファに引き倒される。ユーエの上に覆い被さるような形で倒れ込んで、自分の身体の下を見やれば、惚けた藍色の目がこちらを見つめている。
思考が追いつかない。その代わりに、走り出すのは本能。

「ユーエ……?」
「熱は、ある、かも、しれない、わ」

震える声で告げてくる、

「なんだか、すごく、身体があついから、もっと、……もっと、あの、その、……して、したい、の」
「……何がしたいって?」

彼女が求めていることは分かっていた。
それでもそうやって言わせたくなる、そうたとえば今目の前でその言葉を口にしていいものか逡巡して葛藤して羞恥に顔を赤くする姿とか、ものすごく、かわいいから。
何より、口に出して言わせることで確かに自分から誘ってきたことを自覚させたいから。

「う、ぐ……、……、……せっ、せ、っくす、したい」
「……へえーそっかーユーエセックスしたいんだーへーえ」

もうちょっと可愛げのある言い方でもするかな、と思ったらそうでもなかったことには驚きつつも、アルキメンデスは自分の身体の下の彼女を逃がさないように、がしりと腕を掴んだ。
わざと言い直してやれば、今にも泣きそうな顔で、懇願するような顔で、睨みつけてくる。ちっとも怖くない。

「俺じゃない、ユーエが、誘ってきたんだからな」
「……でも、乗るのね、」
「男はそういう生き物だ、生物得意でも分からないのか?」

据え膳食わぬはなんとやら。
誰がセットしたのかは知らないが。

「う、ぅ」
「にしても珍しいな?どういう風の吹き回しだ」
「ち、ちがうの、わたしじゃない、ソウが」

唐突に名前の出された精霊は、一体彼女に何をしたのだろう。というか人の嫁に何をしているのか。据え膳をセットしてくれたのはともかくとして。

「……へえ、」
「お腹空いた、とかいって、わたしのことなめたりしてきたの、」
「俺もお腹空いたなあ?」

見知った顔で見た目は子供とはいえど、嫁に手を出されるのは気分のいいものではない。何が目的かはともかくとして、そんなことをされたと言うのなら、こちらとて黙っているわけには行かないのだ。
そろりとユーエの首筋に舌を這わせた。

「あっ、や」
「……してほしかったんだろ?」

嬌声と共に彼女の身体が跳ねて、すでに彼女ができあがっているのが、とてもよくわかった。首はくすぐられてもそんなに効かないもん、とか、前に言われた。
そうともなればなおのこと何をしてくれたんだと言う気にはなるし、目の前の彼女に加虐心がゆらゆらと煽られていく。ユーエは悪い子だ、悪い子には――

「っ、ぅあ」

耳が弱いのは知っている。アルキメンデスがそっと右耳に噛み付いただけで、ユーエはびくりと身を震わせて喘いだ。
そのまま執拗に舌を這わせて甘噛みして、を繰り返せば、そのたびに彼女の体は震えた。

「や、あっ、ぅ、ぐ……、う」
「どうしたユーエ、……別に我慢しなくていいんだぞ」
「う、るさ、っあ、う……」

答える声にすでに余裕はない。アルキメンデスの腕に伸ばされた小さな手が、強く爪を立ててくる。
きりきり腕に走る小さな痛みは無視して、ユーエの右の耳を下から上へ、なめ上げた。

「っ、うあ……!」

一際大きな声をあげて、ユーエの身体が跳ねて、そしてふるふる震えて縮こまる。
荒い呼吸を繰り返す彼女の頬にそっと口付けて、追撃をひとつ。

「耳だけでイッたのか、……そんなに良かったんだったらしなくてもいいか?」
「う、ぐ、……やだ、……したい……」

あんまり彼女をいじめると、そのうち泣く。これも知っていた。
ただどうしてもやりたくなるのは、泣きそうな顔で羞恥と戦いながら、懇願してくる彼女が、とても愛しいからだ。そうやってくるユーエはほんとうにかわいいし、そんな顔を見つめるのはひどく興奮する。
今だって、そう。

「あーユーエはかわいいなあー……これからもっと可愛がってやるよ」
「……ばかなの、……ばか……」

顔を真っ赤にして縮こまるユーエを横抱きに抱えて、そのまま彼女を寝室へ連れて行く。ベッドの上にそっと寝かせてキスをひとつ、これから可愛がってやる妻に。


今更確かめるまでもなかったのだけど、彼女の秘所は下着の上からでも分かるくらいに濡れていて、少し触れてやっただけでびくりと肩を跳ねさせてこちらを見てくるのだ。とても物欲しそうに。
彼女を好きにする権利がこの手の中にあることを改めて確認すれば、どうしようもなく興奮した。ぞくぞくする。ここからどういう手段を取ったって、ユーエはきっと従うだろう。求めてきたのは向こうからなのだから。いつものこちらから求めていくのとはまた違った興奮と、すぐにでも駆け出して食い荒らしかねない衝動を抑え込んで、獲物を追い詰めた狼はすっと笑みを浮かべた。

「……な、に」
「いいや?ただユーエは可愛いなあって思ってただけだ」

シャツの中に片手を滑り込ませて、そのままブラジャーのホックを外しに掛かりながら、軽く触れる程度のキスをいくつか。
初めて同じように背中に手を回した時に驚いたのが懐かしく感じられるくらいに、多くの傷跡でぼこぼこになっていた背中は、いくらか滑らかになっていた。

「いつも、そう」
「そうだよ。だって俺の嫁だもん」

話しながらでも、後ろ手かつ片手でホックを外すことなど造作もなくて、そのままシャツを捲り上げれば、豊かな双丘が顕わになる。されるがままになっていたユーエが、ついと目を逸らした。

「あー」
「うええ」

柔らかな双丘に顔をうずめれば、自分にだけ許された至福の一時。
困ったような呻き声が上から降ってくるのも気に留めず、しばらく堪能してから、身を起こしてユーエの上半身の服を脱がせきった。
既に下半身も下着一枚残して剥かれているユーエが、きゅっと身を縮こまらせた。

「寒いか?」
「……すこし」
「すぐ暖めてやるよ」

アルキメンデスも上半身の服を脱ぎ捨てて、ユーエの身体をそっと抱きしめた。肌が直に触れて伝わってくる熱が心地良い。決してか細く弱々しい体格ではないユーエも、こうして腕の中に収めてしまえば、ずいぶんか弱く感じられた。
すべてをこちらに委ねているからか、それとも。

「……あ、る、あったかい」
「生きてるからな、俺も、ユーエも」

優しくキスをして、静かにユーエの下半身に手を伸ばして、下着の中に手を滑り込ませる。茂みの向こうを指で弄れば、びくりと肩を跳ねさせた。
指を動かすたびに、愛液が絡み付いてくる。

「ふ、っあ」
「もうこんなにしちゃってるのか」
「だ、って、あ、やあっ……う、ぐ」
「まだ始まったばっかだぞー」

ユーエはもうすっかり蕩けた顔で、アルキメンデスの指が動かされるたび、身体を震わせて喘ぎ声を漏らしていた。空いている手で胸の片方を揉みしだいてやれば、なおのこと声をあげて身をよじる。
何か言いたげにしている唇を奪って塞いで、指を動かすスピードを速くする。露骨に身体をびくつかせて反応を示すのが可愛くて、愛しくて、たまらない。

「あ、っが、ぅ」

もっと。これでもかと、蹂躙して、鳴かせたい。
自分以外の何もかもを思考から排除させて、こちらだけを見ていればいい。

「ほら、」
「……ッあ、ぁ……ふ、あ」

懇願の視線が突き刺さる。


「あ、ある、」

彼が女性の扱いに手馴れているのも、それでいいようにされて自分がすっかり彼に堕ちてしまったのも、理解はしているつもりだった。
身体の奥があつくて疼いて、より深くまで彼を求める。もっと奥まで深くまで、何もかもを彼に預けて、堕ちるとこまで一直線に。
理性の糸はこちらから誘いを振った時点で千切れて意味を成さなくなっていたとはいえ、それ以上に強固な羞恥の糸が口を縫い付けて許さないのだ、けれど。
今ならそれすら、引きちぎれる気がしたのだ。

「……どうした?」
「おねがい、なの、」

自分から言い出したくはない。今更何を、と言われそうな気がするけど、口に出すのがとにかく躊躇われる。恥ずかしいのだ。羞恥で死にそうになる。

「……っ、う、……ちょうだい、ある、の、……っふ、ぐ」
「……何をだぜ?」

わかってるくせに!

「う、ううう」
「言われなきゃわっかんないなー?」

にやにや笑いながら迫ってくる青を、引っ叩きたくなる。
この、彼の余裕は、一体何処から来るのか、経験の差なのか、それとも彼が攻める側だからなのか、

「……で、ほら、言わないとしてやらないからな」
「ひっう、ぅあ!」

思考は、胸に与えられた刺激で断絶される。
豊満な乳房の上を舌と指が走って、快楽に神経が焦げ付く。――もっと、

「ぁ、……あ、ある、の、……ッ、う、……」

理性も、羞恥も、衝動を止めるには、足りない。


「……うえっ、……ぇ、……おちんちん、くらしゃい」

ぐすぐす泣きながら、ユーエはそう懇願してきた。
ぞくぞくする。ここまで堕ちたか、堕としたか、呂律すら回ってない蕩けた顔で、なんてことを言っているのか、それは本人も自覚はあるのだろう、顔を真っ赤にして泣いているのが、なによりの証拠だ。
今すぐにでも駆け出しそうな衝動を律して、もうひと押し、いじめてみる。

「……へえ。どこに?」
「……ッ、う」

やりすぎたかな、と思ったのも束の間で、

「ぅ……、……こ、これで、いい、……?」

足を自分から開いて。手を添えて、自分から秘所を開く。
受け入れるための構造が顕わになって、アルキメンデスの理性を確かに破砕していく。

「……ふふ、……分かったよ、ちょっと、待ってろ」

余裕を取り繕うのでいっぱいいっぱいになって、そっと彼女に口付けて、視線を逸らす他なかった。


言ってしまった、もう、恥ずかしくて死にたい。そんな思いと、これからを期待しながら静かに彼を待つ。
一度言ってしまえば頭の中は妙に冷静で、ああこれから自分は犯されるんだ、というのも、なんだか他人事のようだった。望んだのは自分だし否定はしない、けれど、あの精霊が全部悪いことにしたい。とんでもない置き土産を残してくれたなと、思った。

「ユーエ」

呼ぶ声と共に太腿に手がかかって、両の足を広げさせられる。
抵抗する理由も何もなく、開かれた秘所の入口に、静かに屹立した彼のものがあてがわれる、

「……いいか?」
「……今更、なにを」

可愛げのある返事は、いつだってできない。

「……はは、あんまり狼を煽って、後悔するなよ。止まらないからな」

ず、と侵入してくる、異物。
肉壁を押しやり、奥深くまで立ち入ってくる、

「ふ、っ……ぅあ、」

自分の内部に彼がいる、それを考えただけでもう十分おかしくなれそうだ、というに、ゆっくりとした動きで与えられる刺激に、思考能力を根こそぎ奪われていく。
名前を呼ぶ声も覚束ない。突かれるたびに口から零れる喘ぎは、とっくに制御できなくなっていた。

「あ、う、っあ、やあ……ッ、ん、あ」
「……っ、ユーエ、」

目の前の快楽に全てを、委ねる。

「あ、……ありゅ……、んッ、ぅ、あ」
「ふ、っ……ユーエ、……激しく、するからな」

反応ひとつ取っても、彼の衝動を加速させるのには十分すぎるくらいで、そう宣言した通りに、ユーエを乱していく。
小さな手が肩に伸ばされる。

「ひ、っあ、やらぁ、あ、」
「口ではそうやって言うくせに、……うおっ、と、」

伸ばされた手は緩やかにアルキメンデスの首に回された。それ以上に強く、ユーエの足が、彼の腰を押さえつけて離さない。

「ゆ、ユーエ、」
「あ、……ありゅー……」

ぞわり、全身を駆け巡るのは、支配欲。
目の前のうさぎを、完膚なきまでに犯して、汚して、誰にも渡したくはない、欲望のままに身体が動く。

「……あ、りゅ、だいしゅき、」
「……俺も、大好きだ、……愛してる、ユーエ、……ユーエ、……ッ!」

ざわざわと走った快楽の波に身を任せて、そして、白濁を吐き出して、果てた。



責任のつもりの薄っぺらいゴム膜を引き剥がして放り捨て、ベッドに横たわっている彼女を見やれば、荒い呼吸を繰り返して、薄らと目を開けたまま、まだ起きている。アルキメンデスのことを待っているようだった。

「……ユーエ?起きてるんだったら服着ろよ」

何時もだったらとっくに寝こけていて、風邪引いても知らないぞ、と思いながら、出来る限りそうならないよう、抱き締めて暖めてやるつもりで眠りにつく。かけた声に緩慢な動きで反応したと思えば、眠たげで力ない声で、名前を呼んでくる。

「あ、る、すき、」

寝惚けている。
多分、次は抱きしめることを懇願してくる。いそいそと服を着て言えば、案の定だった。

「……ユーエお前なあ、眠いんだったら寝ろ」
「やらあ、……ぎゅって、して、……」
「ったくもー」

布団を被りつつ、言われたとおりに彼女の身体を抱きしめてやれば、安心したのか、疲れていたのか、すぐに寝息が聞こえてきた。流石に自分も疲れて、眠い。
彼女との間に何の隔たりもなく愛し合うことができるのは、果たしていつになるのか。――それまでの辛抱、

「……愛してるよ、ユーエ」

意識は夜の闇に溶かした。








「昨晩はお楽しみだったのかー?」
「……ッ!? な、なにを」
「ああそりゃもう。……ただお前なあ、人の嫁に手を出すなよ」
「手を出すだなんて人聞きが悪いのだー!僕はお腹空いてただけなのだ」
「他を当たれよ」


20140425
初めて書き上げたえろです。やっぱり初物って感じがしますね(?)
ソウちゃんのセリフはふぁおさんにすべてチェック頂きました。ありがとうございます。書き直したい。(気力があれば)